ドイツワイン | ワインを知る | ぶどう畑・セラーでの作業

丹精をこめて造られた1本のワインが消費者の元に届くまでには、幾つもの工程があります。過去数十年におけるぶどう栽培と貯蔵技術の新たな発展によって、ドイツワイン業界は存続しています。さらに、最近の集中的な研究のおかげで、ドイツワインの全体的な質が決定的に向上しました。当然のことながら、今日では実に優れたドイツワインが、これまでにない程に生産されています。

ぶどう畑での作業

一年を通じて、ぶどう栽培家には、ぶどうをできるだけ入念に選別して収穫することに加えて、ぶどうの蔓の誘引(トレーニング)や剪定、土の手入れ、茎葉処理や間引きなど、様々な作業があります。1月または2月に、古い木の切り払いを行いますが、この過程は、潜在収量、そして最終的なワインの質に確実に影響を与えます。茎や芽の数や長さを調節も重要です。

品質を重視するぶどう栽培家は、一般に、蔓1本の茎の数を2本の短い茎または1本の長い茎まで減らします。世界的なワイン供給過剰がみられる今日、多くの栽培家が品質こそが極めて重要な要素であり、品質はぶどう畑から始まるということに気付くようになりました。ぶどうの木の剪定は、通常、機械で切ったり潰したりしてから切り取った枝を土に埋め戻すことで腐植土の供給を改善します。今日に至るまで、手作業での剪定は、非常に重要な作業です。広大な農園では、この作業を終えるまでに数週間を要します。

ぶどう畑の作業は、春にピークを迎えます。発芽前に、十分な栄養が芽に行き渡るように枝を折り曲げたり結束したりして樹姿を整えます。土を耕して草生栽培用の種を蒔き、ぶどう畑にある植物を自然に成長させて、土壌に活力を与えます。

この時、肥料、わら、コンポストなどの有機栄養素やマグネシウム、カルシウム、リン酸などの補足的なミネラルも一緒に与えます。今日では、経済的・環境的要因がぶどう畑を肥沃にする上で重要な役割を果たします。

近代的な土壌分析方法を使えば、どの部分で栄養が不足しているかを簡単に特定することができます。また、入念に計画された施肥と草生栽培は、地下水汚染を回避する助けとなります。

「必要な分だけをできるだけ少なく」というのが、ぶどうの木の害虫や菌類病を防除するための農薬散布に関する現代のワイン栽培家のモットーです。まず健康なぶどうの木から始めること、つまり、例えば適切な台木に接ぎ木されたぶどうの木を植えるといったことも、病気や被害の発生を減らす助けとなります。ぶどうの健康維持を助けるために、栽培家は5月~8月の間に天候に応じて4回~7回農薬を散布します。

もう一つの労働集約的な段階は、6月の開花後に始まります。理想的には、開花期、すなわち果粒の形成につながる自家受粉の期間を長引かせないことです。クリュール(花振るい:花が咲いて粒が十分に育たないこと)やミルランダージュ(果粒のサイズが不揃いな状態で成長する)を引き起こす恐れがあるからです。受粉が不十分な花は、枯れるか風や雨で落ちてしまい、その結果、収穫量が激減します。不要な芽を取り除いて成長を促します。また、栽培家は収穫量を減らして品質を高めるために房の剪定を行います。


6月と8月の間に、壁のように生い茂った葉の芽の結束や折り曲げを行って、樹整を整えます。健康な、すなわち青々とした葉は、葉の生育にとって非常に重要です。それにもかかわらず、日射量を増やし、風通しを良くするために、一部の葉を刈り取らなければなりません。また、7月と8月に葉を剪定して木の高さを調整します。今日では、この作業は通常、機械で行われます。

7月と8月上旬に、ぶどうの質と量に影響を与える手段がさらにあります。豆粒大の実を刈り取って房に残った実を強くするのです。質を高めるためにこの方法を用いる栽培家が増えています。8月半ばから、はっきりと目に見えてぶどうの実が熟し始めます。ぶどうの実に含まれる糖分の量は、酸味が減少するにつれて(特にリンゴ酸が減少し、酒石酸は保持されたまま)急激に増えていきます。

夏の天候に応じて、収穫は9月の中旬または下旬に始まります。この時期の降雨は望ましくありません。この熟成段階で実が水分を吸収すると、湿気で実が腐りやすくなるからです。ぶどう栽培家は屈折計という光学機器を使ってぶどうの成熟度を測定し、摘み取りを開始する最適な時期を決めることができます。収穫を開始する時期に関しては、ぶどうの品種、ぶどう畑の場所、そして成熟度が決め手となりますが、各々の栽培家自身が決定します。

栽培家は、収穫したぶどうの量および産地、種類、モストの重量などの収穫に関するデータを連邦農業局に提供することが義務付けられています。平坦な土地や傾斜が緩やかな土地では、ぶどうの収穫は機械を使って行われることが多いです。ただし、ベーレンアウスレーゼとトロッケンベーレンアウスレーゼは、手摘みでなければなりません。また、栽培家は最終収穫報告書を当局に提出することを法律により義務付けられていますが、これによって当局は、全産出量を監視し、必要であれば剰余生産に対処します。

各ワイン生産地域には、特定の収穫制限が課せられています。ある栽培家の収穫高が制限を超過した場合、翌年中にワインとして余剰分を販売することはできません。

セラーでの作業

ドイツワイン法に従い、ワインは新鮮なワイン用ぶどう、または潰したワイン用ぶどう、またはモストだけを完全または部分的に発酵させて作ります。とても簡単に聞こえますが、瓶詰めされたワインが消費者の元に届くまで、セラーマスターがやらなければならない仕事は山ほどあるのです。

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破砕と圧搾

摘み取り後、圧搾場でぶどう桶が降ろされます。白ワインの生産では、ぶどうは直ちに、出来る限り優しく圧搾(全房圧搾)されるか、あるいは除梗(じょこう)・破砕され、その直後または短時間、皮を接触させた後に圧搾されます。モストとは、ぶどうを粉砕または破砕して作られた濃厚な液体のことです。

赤ワインの生産では、一般に、2つの方法のうち1つの方法を実施します。1つめの方法は皮付きのまま発酵させる方法で、タンニンや色が十分に抽出されるまで皮をモストの中に浸けたまま発酵させてからモストを圧搾して、引き続き発酵させます。もう1つの方法は、モストに熱処理を加える方法です。熱処理によって果汁を短時間温め、または熱して色味を抽出します。モストが冷めたら破砕して発酵させます。今日、多くの栽培家が赤ワインの生産にこの2つの方法を組み合わせて使用しています。ロゼワインの生産では、赤ぶどうを直ちに圧搾します。ヴァイスヘルプストは、ドイツで生産されるロゼワインの一種です。

モストの処理と補糖

モスト中の固形物(皮や泥の粒子)を沈殿させてから、自然に(重力によって)または遠心分離機か特殊フィルターのいずれかを使用して、発酵前にモストから潜在的に望ましくない要素を取り除くことがベストです。例えば、ベントナイト(粘土の一種)を使ったファイニング(清澄)は、完成したワインの濁りの原因となる固形物を取り除きます。酸味が多いヴィンテージワインでは、栽培家は過剰な酸味を取り除くために、炭酸カルシウムを使ってモストまたはワインを処理することが許されています。モスト中に自然に存在する酵母では自然発酵を引き起こすことができないことが多いのです。栽培家が発酵を開始するために培養酵母に頼ることがますます一般的になってきているのは、この理由からです。乾燥した砂糖(きび砂糖やテンサイ糖などの蔗糖)をドイツ産のターフェルヴァイン(テーブルワイン)またはシンプルなクヴァリテーツヴァイン(プレディカート、すなわち肩書きのない上質のワイン)に添加することが許可されており、フランスをはじめ他のワイン生産国でも行われています。「補糖」として知られるこの過程は、モスト中の天然の糖分の不足(収穫年の気温が低く、ぶどうが十分に熟していない場合に生じる)を補うものです。この添加された砂糖は発酵中にアルコールに変化します。

発酵

「平均的な」モストでは、摂氏14~20度(華氏57~68度)の温度で8~10日間以内にイーストが糖をアルコールと二酸化炭素に変化させます(すなわちアルコール発酵)。上質な(糖度が高めの)モストでは、例えば、トロッケンベーレンアウスレーゼのように、発酵に何か月もかかることがあります。発酵は温度で(加熱または冷却によって)コントロールするか、ステンレス鋼の圧力タンクを使って調節することができます。以上の方法で発酵を止めて、ワインに一定量の天然の甘味(ドイツ語で「レストツッカー」すなわち残糖)を残すことができます。発酵の途中、すなわち、モストとワインの中間の濁りのある飲料は、フェーダーヴァイサー、ビッツラー、ラウシャーまたはザウザー(英語に相当する語はありません)と呼ばれます。発酵が終わったものは、「若い」ワインと呼ばれます。

ワインの醸造

発酵後、樽やタンクの底に沈殿した澱(死んだ酵母細胞、不溶性の酒石酸塩などの固形物)を、滓引き(ラッキング)(澱を元の容器に残したまま、ワインを別の容器に移し替えること)によって若いワインから分離します。その後、通常は二酸化硫黄を添加してアルデヒドなどの酸化物質と結合させて、ワインの酸化を防止します。特に、赤ワインの製造ではマロラクティック発酵が望ましいことが多いです。マロラクティック発酵で乳酸菌が強いリンゴ酸を弱い乳酸に変えることによってワインの酸味が柔らかくなります。2回目の澱引きは、通常、清澄と併せて行います。清澄では、清澄剤を添加してワイン中に懸濁している粒子を取り除きますが、この清澄剤はラッキング中に除去されます。

ワイン中の残留糖分は、発酵の中断によって、または瓶詰前に完成したワインにズースレゼルヴェ(発酵させていない、天然の甘いぶどう果汁)を加えることによって作ることができます。大抵の場合、アウスレーゼ、ベーレンアウスレーゼ、トロッケンベーレンアウスレーゼなどの非常に熟成したワインのモスト中では、イーストはすべての糖を発酵させることができません。これらのワインは残糖が自然に保たれているのです。

熟成と瓶詰

熟成、すなわち樽や瓶の中の貯蔵期間は、ワインの質と風味に決定的な影響を与えます。今日の消費者は、若い新鮮なワインの方を好むように思われます。そのため、白ワインは最小限の熟成の後に瓶詰・販売されることが多いです。その一方で、高級および最高級のワインは、瓶詰前にさらに長い期間熟成されます。赤ワインと、ブルグンダーすなわちピノのぶどう品種から作られる白ワインは、小さな新しいオーク樽(バリック)でますます熟成されるようになっています。

農園の規模にもよりますが、今日、ほとんどの瓶詰が半自動化または全自動化された、様々なサイズと容量の瓶詰ラインで行われています。100パーセントの清浄度を保証するためにボトルを殺菌し、充填後、直ちにコルクまたはスクリューキャップで封をします。この後、ワインは数週間適温で保存されてから出荷されます。瓶詰直後または発注時にカプセルとラベルが取り付けられます。