ドイツワインコラム No.5

優雅でアロマに満ちた、白ワインの王様。リースリングは、そんな言葉がふさわしい魅惑的な味わいです。

ワインのプロや愛好家はもちろんのこと、ワインにそれほど詳しくない初心者の人でも、素直に「美味しい」と感じられるのです。

リースリングは、ドイツ原産といわれるぶどう品種。それだけに、まさにドイツワインの代名詞ともいえる存在で、その栽培面積は世界最大を誇ります。現在も世界で生産されるリースリングのじつに約4割はドイツ産なのです。

とりわけリースリング人気が高まりを見せた「リースリング・ルネッサンス」と呼ばれる1990年代後半以降は、ドイツでもより生産量が増えました。

リースリングはフランスやニュージーランドなど他国でも栽培されていますが、ドイツで栽培されるリースリングの魅力はなんといってもそのエレガントさにあります。白い花や柑橘、洋ナシやハチミツ、南国のフルーツといった華やかな香り、飲むと果実感に加えてミネラルと美しい酸も口いっぱいに広がります。

ぶどう栽培の北限に近く、昼夜の寒暖差もあるドイツではぶどうがゆっくりと熟すので、果実感と美しい酸が共存するワインになるのです。

リースリングはその地域の土壌や気候を反映するため、同じドイツのなかでも生産地域によって味わいが異なります。

たとえばワイン生産地の一つであるモーゼルは、川の渓谷沿いに息をのむような急斜面の畑が続きます。その痩せた土壌からは、緻密で緊張感のある高品質のワイン生まれます。

もうひとつの名産地ラインガウはやや気候が温暖なので、重厚で力強い味わいになります。

さらに南の丘陵地ラインヘッセンやファルツでは、透明感がありながらも親しみやすい味わいが魅力です。

またリースリングは、辛口からほんのり甘口までいろんな味わいのワインを楽しめることができるのも特徴です。低~中程度のアルコールでも、リースリングで作ったワインはアロマに満ちたフレッシュな味わいで、熟成にも向いています。そしてなんといっても、フルーティな酸といろいろなアロマを同時に味わえるのがリースリングの良さです。酸味のきれいなフレッシュな辛口から、ほんのり甘みのあるもの、たっぷり甘さののったタイプまで、バラエティに富んだ味を楽しむことができます。

合わせる料理は、基本的にクセのない白身魚とは好相性。白身魚の刺身、天婦羅、焼き魚など好みの調理法で。香り豊かなワインなので大葉や三つ葉、ハーブなどを使ったサラダもぴったりです。

さらに肉類でも比較的軽い味わいのものなら十分ボリューム感が合います。生ハムなどのオードブルの盛り合わせ、ドイツの特産であるソーセージやジャガイモ、鶏肉とも相性抜群です。

(文:鳥海美奈子)


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